コンパス使って駆け出そう 馴染みのない街で東の空を追いかける日の出ラン14km

旅先で見知らぬ街を走るのは実に面白い。マンネリ化した身体や感性にいい刺激を与えてくれる。

昨夜は妻の両親と興味深い話しを延々と続け、寝るのが零時を過ぎてしまった。

歴史を重ねてきた夫婦の話しは聞いていて本当に参考になるし、僕らが悩んできた道を先に経験しているだけあって励みにもなる。

データ的にはあまりよろしくない数値の睡眠だったが、体感的にはぐっすりと眠っていたような気がする。

やはり僕には そば殻の枕 がしっくりくるようだ。

僕はいま早寝とともに 睡眠 に対して、だいぶ前向きな考えをもつようになってきた。


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一時期ショートスリーパーと疑うほど、毎日短い睡眠で活動してきた。

しかしこのままではいけないと感じてからは、意識的に(最低でも)6時間は寝るように心がけるようにした。

その甲斐あって、以前に比べていくぶん身体の調子がいいように感じる。

さてランニングだ。

シューズの靴紐を結びランニングアプリの準備を整えてから僕は、齧られたリンゴが背面にプリントされたデジタルデバイスを手にして以来はじめてのアプリを起動した。

「コンパス」だ。

早起きしてランニングに出る目的は「走ること」以外にもう一つ、日の出の写真を撮る ことにある。

住み慣れた街であれば太陽がどこから昇ってくるのかは、苦味の効いたインスタントコーヒーを作るより簡単だ。

しかし妻の実家は、周りがビルや家屋 たくさんの木々に囲まれている。

群青色の広大な空に染まるオレンジ色の光を把握するのは造作もないことのように感じるが、実際には太陽の位置を確かめるのは難しい。

僕はコンパスから太陽の方角を割り出し駆け出した。

うっすらと東の空から希望の光が顔を出す。

この一週間、まともに日の出を見る機会が極端に少なかったせいで、その光を発見した瞬間 言葉にならない声を発していた。

僕は目視とコンパスを頼りに、もっとハッキリとした太陽を探した。周りに邪魔されてない 自信と威厳に満ちたオレンジ色の光を。

川面に映るクジラみたいな雲も、必死に朝陽を探す僕を優しく観察しているようだ。

見慣れぬ街の自然たちは、東京で僕がどんな境遇にあろうとも何も動じない。

何も感じない自然たちに「何をそんな小さなところで躓(つまず)いてるんだ?」と、率直に問われているようだ。

なるほど僕は 人生という長い長い道に転がっているただ一つの小石に躓いているだけなのかもしれない。

東京都と神奈川県の境は、実家から距離にして4km。

走りはじめて25分ほど経過しているのだけれど、太陽の輪郭をハッキリと捉えることはできない。

やがて国道246号線と国道16号線が交わる地点にまでくると、唸りをあげた大きなトラックをよく目にするようになった。

何年も工事を続ける国道16号線(通称 保土ヶ谷バイパス)の高架延長工事で、バイパスは車線の減少を余儀なくされている。

日中の混雑ぶりにドライバーのイライラは募るばかりだろうが、早朝この時間であれば難なく通行することができる。

早起きすることの影響はこういうところでも活かせるのだなと、通行量の少ないバイパスを眺めてそう思った。

東名高速 横浜町田インターチェンジ付近は高低差のある土地で、バイパスや田畑やラブホテルが密集している。

歩道もかなりうねっていて、勢いよく走っていると道を見失いあっという間に迷ってしまいそうだ。

偶然、東名高速道路を横断する高架橋を見つけた。

ここまでくるともうコンパスの出番はなくなり、山の向こうが東の空なんだとオレンジ色に染まる空の滲みを見ればすぐにわかる。

ちょっと恐ろしげな山に足を踏み入れると、冷んやりとした空気と背の高い木々に囲まれた山道だ。

先日箱根の山で経験した苦いランニングを思い出す。

本格的なトレイルを経験しないまま素人が山を走ってはいけない。

「肺や心臓が口から飛び出す」というオカルティックな表現を、あの時ばかり真剣に考えたことはなかった。

きっとこれは経験しなければ理解できない気持ちだと思う。ちゃんとしたトレーニングをしないまま山を走るのはできればごめんだ。

山道を抜けてはじめて朝陽の端っこを捕まえられた。

やはり木々に囲まれてちゃんとした輪郭は捉えられないものの、走りはじめて50分を経過する頃にようやくそれっぽい日の出を見ることはできた。

遠慮がちに顔を覗かせて「やっと来たか」と言わんばかりの表情を、林と神社と田んぼの真ん中に立つ僕に見せた。

まずはひとつの目的は果たせたのだから今度はランニングに集中しようと、ぐるぐると感覚だけで走っていた道を折り返すことにした。

再び、まだ静かな国道に出た。

バイパスは相変わらず軽快にスピードを上げていく乗用車と、我がもの顏で唸るトラックがまばらに走っているだけで、ひっそりとはじまった新しい一日を噛み締めているのは僕だけだ。

よろしく世界。

ずいぶん白くなってしまったが、太陽の光は僕に新しいエネルギーをくれた。

スタート地点の妻の実家付近に戻る頃にはすっかり空は明るくなっていた。

アスファルトにある僕の影も徐々に長さを減らしていく。

予定より2kmも多く距離を稼げたのは、見慣れぬ土地をただ朝陽を求めて走っていたからじゃないだろうか。

横浜町田インターチェンジ付近で少し迷ってしまったが、大きなトラブルもなく無事に14km走り切れた。

8月に目標としている走行距離は 200km を設定していたが、最終日にしてなんとかクリアできた。

月後半に距離負担が大きくなるのは先月からの反省点だったが、今月も変わらずだった。

なんにせよ、200kmをクリアしたのだから自分を褒めてあげるとしよう。

そして、また明日からの新しい目標を決めて駆け出すとしよう。

人生の指針は決まりきった方角にはないけれど、そこでコンパスを使うか感性に身を任せるか、自分にとって 楽しいと思える選択 をしたいと願う。


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